2024/01/28
ある編集者のつぶやき #3 峰隆一郎の尋常でない想像力
#1と#2で隆慶一郎のことを書いたが、その隆慶一郎としばしば混同されたのが峰隆一郎だ。
名前が似ていてややこしいのだが、 峰隆一郎は、過去の剣術剣豪小説を調べる中で初めて知った作家だ。ハードボイルドタッチの時代小説、旅行ミステリーを100冊以上書いたという。
実は小説家としてのデビューは峰の方が数年早かった。剣術剣豪小説については並々ならぬこだわりがあったようで、#1で紹介した『剣豪はなぜ人を斬るか』で最も面白かったエピソードがある。
峰は一度も剣術や剣道の類を体験したことがなく、木刀さえ持ったことがなかったらしい。
しかし寝る前の30分間、天井に敵を置いて、どうやって人を斬るか、どうやったら人を斬れるか、毎夜毎夜想像していたという。これを15年も続けた結果、頭の中だけで達人になったような気がする、と記しているのだ。
このエピソード1つとっても、一種の狂人だったと思う(作家にとって「狂人」とは、誉め言葉だと私は考えている)。
当時は人気作家だったのだろうが、現在その名を知る人はおそらく非常に少なく、彼の遺した作品の一部はAmazon Kindleでのみ読むことができる。
作家が作品と名を後世に残すのは、本当に難しいのだと改めて思った次第だ。
プロフィール
ある編集者
大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。
あわせて読みたい
-
2024/02/08
ある編集者のつぶやき #5 紫式部の住んだ福井県で
-
2024/02/04
ある編集者のつぶやき #4 紫式部と福井県の意外な関係性とは
-
2024/07/20
米の大手書店「バーンズ・アンド・ノーブル」の復活劇に学ぶ
-
2024/02/18
「犬の専門雑誌」と「猫の専門雑誌」、売れない理由と売れる理由
-
2024/06/19
「大盛堂書店」の歴史を書いたが、渋谷で好きな書店といえば……
人気記事ランキング
-
2024/2/3
台湾ダイエット“埋線”を試してみたらこうなった(前編)
-
2024/2/9
台湾ダイエット“埋線”を試してみたらこうなった(後編)
-
2024/6/27
《台湾グルメ》地瓜球(サツマイモボール)〜罪深グルメ③〜
-
2024/6/25
劇団四季の新作『ゴースト&レディ』は見ごたえあるぞ~!!
-
2024/3/22
タッカンマリは観光客が集まる人気店よりも隣のお店が美味しい!
LINEで更新通知が届きます!