観劇

2024/09/03

ネコろんで読む英語コラム (22)ビリー・エリオットとイギリスの階級社会

ミュージカル『ビリー・エリオット』を観た。
この舞台は2000年に公開された映画『Billy Elliot(邦題:リトルダンサー)』のミュージカル版で、イギリスの貧しい炭鉱町に父、兄、祖母と住む少年ビリーがバレエと出会い、夢中になっていくというお話。
 
映画版を観たときは私も若かったからビリーに感情移入していたけれど、この年になるとビリーの親や彼を取り巻く大人たちの方に気持ちが行ってしまう。とても感動的なミュージカルなのでおススメ。

 
『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
ビリー・エリオット リトル・ダンサー 明場由美子 ネコろんで読む英語コラム 英語発音 英語コラム

東京公演は10月26日まで、大阪は11月9日から24日まで上演しているのでぜひ。
公式HP
 
日本版ミュージカルでは炭鉱町の人たちは北九州弁を話し、バレエのオーディションにやってくる中産階級のご婦人たちは山の手言葉を話している。
 
オリジナル版ではビリーたちはイギリス北部訛りの英語を話している。



この言葉(アクセント)の違いはイギリスを知る上で非常に重要なのだ。というのもイギリスは今でもバリバリの階級社会。方言だけでなく階級差によるアクセントがある。
Helloと一言発しただけでその人の出自がわかると言われるくらい顕著なのだ。
 
同じロンドン出身であっても中産階級と労働者階級ではアクセントが違うという、日本人からするとちょっと不思議な感じがするのがイギリス英語。これがアメリカ英語との最大の違いと言ってもいい。
 
イギリスもアメリカも日本語のような共通語というものがない。一応あるにはあるけれど、日本みたいにアナウンサーは共通語を話さなくてはならないといった決まりはない。
 
イギリスの場合、RPと呼ばれるいわゆる共通語のようなカテゴリがある。
RPとはreceived pronunciationの略で容認発音と訳されるが、これはかつてQueen’s Englishと呼ばれていたもので、クイーンズイングリッシュ=イギリス英語と思っている日本人は多いのではないだろうか。
実際はクイーンズイングリッシュを話すのは女王と周辺の王族だけであり、国民の99.999…%はそんな話し方はしない。当たり前だけど(笑)。
 
言葉と文化は切っても切り離せない。言葉遣いや使う語彙でその人の育ちや教養がわかるというのは、どの言語でもあることだと思う。ああ育ちがいいんだなとか、インテリなんだなとか。
 
でもアクセントひとつでその人の所属する階級がわかるというのはイギリスならではないかと思う。
そのことをちょっと頭の片隅に置いておくと、イギリス映画やドラマがさらに楽しめると思う。

執筆者プロフィール

Yumi

English Boot Camp代表。英語発音コーチ、著者。東京在住の大阪人。
2010年に開設した英語学習者向けのYouTubeはチャンネル登録者数が19万人を超える。
小学生の時にゴダイゴのタケカワユキヒデのファンになり英語に興味を持つ。
思春期は洋楽(ロック)とアメリカ文化に傾倒し、いつしか英語を教えるように。
著書に『ネコろんで学べる英語発音の本』がある。タイトルからもわかるように大の愛猫家。

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