韓国エンタメ

2025/04/03

【毎日がエンタメ】コラム#10 共感できるかどうかが重要な『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』

ベテラン 凶悪犯罪捜査班 毎日がエンタメ

ⓒ 2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED

 
公開日:2025年4月11日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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ベテラン 凶悪犯罪捜査班

法では裁かれなかった悪人が連続して殺された。
不条理な司法制度の限界に憤っていた世論は、私刑を下す犯人のことを“ヘチ”と呼んだ。
ヘチとは善と悪をさばく伝説上の生き物名前だ。
 
まるで正義のヒーローのようにもてはやされるヘチを、ベテラン刑事のドチョル(ファン・ジョンミン)は複雑な思いで見ていた。
 
この頃、ドチョルたちのいる凶悪犯罪捜査班に新人刑事のソヌ(チョン・ヘイン)も加わり、事件は解決に近づくかのように見えたが―。



*****
映画『ベテラン』が韓国で大ヒットしたのは今から約10年前のこと。
2015年8月に公開され、1,341万人もの観客を動員。今も、公開されてきた韓国映画の歴代5位に輝いている。
 
『ベテラン』は刑事のドチョル(ファン・ジョンミン)と凶悪な財閥の御曹司(ユ・アイン)の対決を描いたアクション映画だ。
いかにも韓国人の好きそうなストーリーだが、ヒットした要因はほかにもある。
この映画が公開される8ヶ月前、まさに財閥家のモンスターぶりが注目されていた。日本でも大きく報道された“ナッツ・リターン事件”だ。
 
大韓航空の副社長だったチョ・ヒョナ氏が機内でのナッツの出し方に激怒。すでに動いている航空機を搭乗ゲートにリターンさせ、世間から批判を浴びた。
逮捕されたチョ・ヒョナ氏の裁判が続く中での『ベテラン』公開は、まさに絶妙のタイミングだったように思う。
ちなみに、韓国ではこの事件がきっかけでマカダミアナッツの売上が急増するという珍現象も起きた。
 
その『ベテランの』続編となる『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』(原題:『ベテラン2』)が今月11日(金)より日本でも公開される。
チョン・ヘインやアン・ボヒョンといった人気俳優が加わり、“歪んだ正義”が描かれた続編は、韓国では昨年の秋夕(旧盆)連休に入る直前に公開された。
 
2024年の韓国映画の中で4位となる752万人を動員したが、それでも前作と比べると若干寂しい数字に違いない。リュ・スンワン監督もインタビューで無念さをにじませている。
 
思ったほど観客数が伸びなかった理由として指摘されたのは、チョン・ヘイン演じるパク・ソヌ刑事のキャラクターだった。

韓国映画 ベテラン チョン・ヘイン

法の裁きを免れた犯罪者に制裁を加えるヒーロー的存在なのか、ただのサイコパスなのか。
そこが曖昧になっていき、ネット上でも「共感することが難しかった」という声が多い。

 
本作を観ていて、複雑な思いがするのはレッカー(韓国の炎上系YouTuber)の“正義部長”がヘチを煽り、世間の注目を集めている点だ。

ベテラン2 炎上系YouTuber 韓国社会
 
今、韓国では亡くなったキム・セロンさんと人気俳優キム・スヒョンをめぐり、YouTuberたちが2人のプライベートな話を次々と暴露。キム・セロンさんの遺族やキム・スヒョンの事務所、そしてYouTuberたちの間で告訴戦が繰り広げられている。そこに元恋人や元夫という人物まで登場して混戦模様だ。
 
連日飛び出す新事実を目にしても、もはや何が真実なのか分からない。
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』と同様で、どのキャラにも共感できずに戸惑うばかりの展開になっている。

 

『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』<予告編
監督:リュ・スンワン
脚本:リュ・スンワン、イ・ウォンジェ
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ヘイン、アン・ボヒョン、オ・ダルス
原題:베테랑2
英題:I,THE EXECUTIONER
2024年/韓国/118分
ⓒ 2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
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執筆者プロフィール

児玉愛子(らぶこ)

           

韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、単行本、ガイドブック等の企画から取材、執筆を行う。
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係やエンタメコラムを寄稿する韓国ウオッチャー。

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