2025/02/27
【毎日がエンタメ】コラム#8 数奇な運命をたどった韓国映画『プロジェクト・サイレンス』
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公開日:2025年2月28日(金)
プロジェクト・サイレンス
国家安保室行政官ジョンウォン(イ・ソンギュン)は、留学する娘を空港へ送る途中、空港大橋で玉突き事故に巻きこまれる。
タンカーの横転で有毒ガスが広まり、電波障害も起きる中、救助ヘリの墜落で生存者たちは橋の上に取り残された。そんな中、移送中の軍事実験犬が脱走し、統制不能になる。
濃霧の中、橋の上は地獄と化し―。
*****
長期に渡って公開されるかどうか不透明だった映画がある。
故イ・ソンギュンさん主演の韓国映画『プロジェクト・サイレンス』(原題:『脱出:プロジェクト・サイレンス』)だ。
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制作費200億ウォン(約22億円)ともいわれている『プロジェクト・サイレンス』は、当初の予定では2023年に韓国で公開されるはずだった。
その前哨戦として、5月には第76回カンヌ国際映画祭のミッドナイトスクリーニング部門にも招待されている。このとき、主演俳優のイ・ソンギュンさんもレッドカーペットを歩いた。
ところが、秋になって状況が一転する。
イ・ソンギュンさんに麻薬使用の疑いが浮上し、捜査が行われたからだ。映画の公開は延期となり、その年の終わりにイ・ソンギュンさんは自ら命を絶った。
その後、映画は公開そっちのけで、違約金の話題が中心となる時期もあった。
ようやく公開にこぎつけたのは、イ・ソンギュンさんの死から半年以上が過ぎた頃。昨年の7月のことだ。
“イ・ソンギュンさんの遺作”として注目を浴びた『プロジェクト・サイエンス』のチケットの前売りは好調で、ネット上には「イ・ソンギュンに会いに劇場に行こう」といった言葉が飛び交っていた。
だが、いざ公開されるとその勢いは減速し、期待された観客動員数も69万人止まり。映画の損益分岐点といわれる400万人には遠く及ばない結果に終わっている。
この頃、ネット上では「この作品をイ・ソンギュンさんの遺作と思いたくない」という言葉で溢れ返った。
実際、生き残りをかけた96分のパニック映画のわりに、体感としては長く感じられる。
実験犬のCG処理は素人の私の目から見ても甘いように思えた。
公開前はあれだけ歓喜を以て迎えられたのに、いざ公開されたら酷評の嵐。
映画の中に立ち込める霧が晴れたら厳しい現実が待っていた。
そんな無惨な結果だが、スクリーンの中で演技するイ・ソンギュンの姿はやはり素晴らしく、胸にこみ上げるものがあった。
韓国人の酷評は置いといて、目に焼きつけておきたいと思えた。
執筆者プロフィール
児玉愛子(らぶこ)
韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、単行本、ガイドブック等の企画から取材、執筆を行う。
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係やエンタメコラムを寄稿する韓国ウオッチャー。
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