韓国エンタメ

2024/08/15

【毎日がエンタメ】コラム #2 元祖“涙の女王”のチェ・ジウがキャラ変した映画

今年、日本で一番話題になった韓国ドラマは『涙の女王』だろう。
ヒロインを演じたのはキム・ジウォンだが、元祖“涙の女王”といえば、日本に韓流ブームをもたらした『冬のソナタ』のチェ・ジウだ。
 
2003年、日本で初放送された『冬のソナタ』はやがて日本で大きなブームを巻き起こす。韓流ブームの日本上陸だった。
主演俳優のヨン様ことペ・ヨンジュンと、ヒロインのチェ・ジウはたびたび来日し、当時の注目度の高さは今のキム・スヒョンやキム・ジウォンとは比べ物にならないほどだった。『冬のソナタ』を観ていない人でさえ、ヨン様とジウ姫の名前ぐらいは知っていた。
 
チェ・ジウは日本で“涙の女王”と呼ばれたが、韓国での立ち位置は微妙だったと思う。
“演技派女優”とはいわれなかったし、映画に主演して観客を呼べるほどの“人気女優”でもない。日本での存在感の大きさと、韓国でのポジションは必ずしも比例していなかった。
 
数多くいる女優の中で、チェ・ジウもまた“ドラマでいつもヒロイン”という印象になり、それ以上でも以下でもなかった。
 
一方、韓国ドラマで多くの女優が親しみやすいヒロインを演じていた頃、視聴者の“飽き”を解消した女優がいる。90年代から活躍し、一度は引退をしたコ・ヒョンジョンだ。
時代劇『善徳女王』ではコ・ヒョンジョン演じる悪女のミシルが視聴者の目を釘付けに。その人気は、あろうことか主演女優を食ってしまう勢いだった。
 
悪役なのに憎まれることなく、むしろ視聴者を魅了したコ・ヒョンジョン。
その後、チェ・ジウがバラエティー番組で「いつか悪役を演じてみたい」と語ったのは、まさにコ・ヒョンジョンのミシル役を大いに意識したものと思われる。
そして、それを聞いた視聴者の多くがこう思ったのではないか。「似合わねー!」
 
それはさておき、チェ・ジウの悪役への転向(こう書くとプロレスラーのようだが)はなかなか成功していないように見えた。
ドラマでクールな役を演じたりもしたが、コ・ヒョンジョンが演じたミシルの貫禄には遠く及ばず。
「視聴者から徹底的に嫌われてもいい」という覚悟よりはむしろ、あわよくば「第2のミシルになりたい」といった思いが見え隠れしていたように思う。



そして時代は変わり、ここにきてチェ・ジウが思いきったキャラクター変更に成功(したように見える)作品と出会えた。今週8月16日(金)から日本でも公開される映画『ニューノーマル』で異色の役柄に挑戦しているのだ。
まったく似合ってなくもなく(←どっちだよ)、このキャラクターは間違いなく、従来のチェ・ジウファンを驚かせるだろう。
 
『ニューノーマル』
韓国映画 チェ・ジウ ニューノーマル サスペンス映画 ハ・ダイン

©2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

公式HP

 
ところが、映画『ニューノーマル』ではチェ・ジウにとって1つだけ痛い要素がある。
それは映画を最後まで観てしまうと、新人女優ハ・ダインの印象が強烈に残ることだ。
 
ハ・ダイン
韓国映画 チェ・ジウ ニューノーマル サスペンス映画 ハ・ダイン

©2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.

 
ハ・ダインの表情、声、演技、そのすべてに新人らしからぬ吸引力があり、観客の目を引き付ける。これはチェ・ジウにとって悲劇以外の何ものでもないだろう。
 
この映画においてチェ・ジウはもはや“涙のヒロイン”でなくなったが、どこか被害者に近い印象を受けてしまう。せっかくのキャラ変も、こうなると“悲劇のヒロイン”じゃないのか。

執筆者プロフィール

児玉愛子(らぶこ)

           

韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、単行本、ガイドブック等の企画から取材、執筆を行う。
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係やエンタメコラムを寄稿する韓国ウオッチャー。

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