2024/08/30
【毎日がエンタメ】コラム #4 『パラサイト』アカデミー賞の受賞後、イ・ソンギュンさんに「注射器と手錠が視える」と予言した巫女
去年10月、韓国の俳優イ・ソンギュンさんに突如、違法薬物使用の疑いが浮上した。
イ・ソンギュンさんといえば、20年に米アカデミー賞で作品賞など4冠に輝いた映画『パラサイト 半地下の家族』に出演。金持ちのIT社長役を演じたが、日本ではドラマ『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』で絶大な人気を誇っていた。
誠実で爽やかなイメージが強かっただけに、韓国社会でもこの報道は衝撃をもって伝えられた。
イ・ソンギュンさんはその後、数回にわたる厳しい取り調べを受け、12月に自ら死を選んだ。
日本ではあまり報じられなかったが、イ・ソンギュンさんの薬物使用容疑が騒がれ始めたときにもう1人、話題になった人物がいる。それは巫女だ。
それより3年前の2020年、『パラサイト』が世界を席巻し、韓国が盛り上がっているとき、ある巫女がイ・ソンギュンさんに警鐘を鳴らしていたのだ。
『パラサイト』のポン・ジュノ監督と主演俳優のソン・ガンホ、さらにイ・ソンギュンさんが巫女に今後の運勢を視てもらうという番組企画だった。
イ・ソンギュンさんに対し、巫女は「えっ? なんでだろう?」と戸惑いながら「注射器と手錠が見える」と言って周囲を驚かせた。
さらに「特に10月に気をつけなさい」と付け加えたのだ。
予言どおり、イ・ソンギュンさんはその3年後の10月に違法薬物の使用容疑で世間を騒がせた。
この映像はYouTubeで視聴できたが、一気にアクセスが集中。今現在は閲覧できなくなっている。
韓国には医療や科学的な根拠よりも、巫俗(シャーマニズム)を信じる人たちが少なくない。ドラマや映画でもたびたび祈祷師が儀式を行う様子が描かれている。
9月6日(金)に日本でも公開予定の韓国映画『憑依』では、人気俳優のカン・ドンウォンがインチキ祈祷師役を演じている。冒頭から『パラサイト』を彷彿とさせるシーンで金儲けをしているのだ。
『憑依』
© 2023 CJ ENM Co., Ltd., FILMMAKERS R&K ALL RIGHTS RESERVED
公式HP
映画はコメディーとホラーとアクション…と、いろいろな要素を詰め合わせているが、どれも中途半端。何か1つのジャンルに集中したほうがよかったんじゃないか。
韓国では去年の秋夕(チュソク=旧盆)連休に公開されたが、観客動員数は191万人止まり。損益分岐点を超えることはできなかった。
主演俳優のカン・ドンウォンは人気があるにもかかわらず、単独主演での大ヒット作に恵まれていない。
本人もそれを自覚し、作品が公開されるたびインタビューで観客動員数に言及している。
『憑依』については「シナリオが新鮮で面白かった」と答えているが、望んでいた結果にはならなかった。
ちなみに、故イ・ソンギュンさんを視た巫女は、その翌年に健康悪化で亡くなったそうだ。
ゾッとするような未来を言い当てたのだ。
もしご存命だったら仕事依頼が後を絶たなかったことだろう。
当たるか、当たらないか。
おそらくカン・ドンウォンも祈祷師役を演じる前に、興行の行方を巫女に視てほしかったのでは。
執筆者プロフィール
児玉愛子(らぶこ)
韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、単行本、ガイドブック等の企画から取材、執筆を行う。
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係やエンタメコラムを寄稿する韓国ウオッチャー。
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