韓国エンタメ

2024/11/20

【毎日がエンタメ】コラム #6 映画『対外秘』で想像せずにはいられなかったこと

韓国映画『対外秘』が先週11月15日(金)から日本でも公開されている。
 
『対外秘』
韓国映画 対外秘 毎日がエンタメ コラム 児玉愛子

ⓒ 2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

公式HP
 
結末が予想できない展開は面白いが、イマイチ共感できなかったのは、私自身がいわゆる“情報弱者”だからだ。
それを言ってしまったら、多くの人にとっても縁のない話なんだろうけど。

 
『対外秘』の舞台は1990年代の釜山。
そこで行われる国会議員選挙は「やるか、やられるか」の様相を呈している。

 
初めて党の公認候補になった政治家のヘウン(チョ・ジヌン)は当選を確信。
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だが、突如、公認候補から外される。

 
ヘウンを蹴落としたのは、陰で国をも動かすスンテ(イ・ソンミン)。
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釜山で計画されている再開発工事を牛耳っており、再開発に反対のヘウンを捨て駒にしたのだ。

 
激怒したヘウンは「対外秘」とされる極秘の文書を入手。
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この文書により、非公認ながら莫大な選挙資金を集めることに成功する。

 
裏で札束が飛び交う選挙。
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想像を絶する不正操作も行われ、やがてヘウンは地獄を見ることになる―。



そもそも、なぜ文書一つでヘウンが資金を集めることに成功したのか?
「対外秘」という機密文書には、釜山の再開発地域が明記されていた。その土地を手にすれば、後に莫大な利益を得られるのだ。札束を積んででも欲しい情報に違いない。

 
こうした情報を運良く入手できた一部の人間が巨万の富を築いていく。
情報弱者にはまったく縁のない話だが、こんなことは何十年も前から繰り返され、過去の韓国映画でも描かれている。

 
想像できるだろうか?
富の象徴ともいえる、現在の韓国・ソウルの江南(カンナム)地区も、今から50年ほど前は田畑が広がっていたことを。
 
元々、江南はソウル組ではなく、京畿道の一部だった。それが編入扱いでソウル市に組み込まれたのだ。
以後、大規模な再開発工事が行われ、現在のようなビル街に変貌していった。当然、江南地区がそうなると知っていた人は多くないだろう。
 
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ビル街になった江南地区
 
韓国第2の都市といわれる釜山も現在は中心部に高層ビルが建ち並び、映画『対外秘』も90年代の釜山の再現が難しかったという。
 
首都ソウルの変化はそれどころではない。
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ソウル『COEXモール』内にある「ピョルマダン図書館」

 
映画『対外秘』で“宝の山”ともいえる極秘文書を手にした男たちはどんな結末を迎えたのか?
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『対外秘』は救いのない映画だが、一番の救いのなさは、いつの時代も一部の権力者だけが甘い汁を吸える現実社会なんじゃないか。
 
共感はできなかったが、そんなふうに嫌な気持ちになる映画ではあった。

執筆者プロフィール

児玉愛子(らぶこ)

           

韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、単行本、ガイドブック等の企画から取材、執筆を行う。
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係やエンタメコラムを寄稿する韓国ウオッチャー。

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