2024/06/15
ある編集者のつぶやき #22 「不死身の分隊長」が経営した書店「大盛堂書店」
渋谷スクランブル交差点の角にあり、センター街の入口の「大盛堂書店」
渋谷の「大盛堂書店」の歴史が好きだ。
「大盛堂書店」は太平洋戦争の「アンガウルの戦い」で超人的な活躍をし、アメリカ兵からも恐れられ「不死身の分隊長」と呼ばれた元日本兵が経営した店として知られている。
その経営者・舩坂弘氏は、防衛研究所が編んだ「戦史叢書」にただ一人、個人名が出てくる人物だ。
最近では、マンガ『ゴールデンカムイ』の主人公「不死身の杉元」こと杉元佐一のモデルの一人にもなったと言われている(舩坂の超人伝説に興味のある方は、「戦史叢書 第013巻 中部太平洋陸軍作戦<2> ペリリュー・アンガウル・硫黄島」P.222~223の氏の回想、または自伝『英霊の絶叫 玉砕島アンガウル戦記』を参照されたい)。
戦争で強烈な体験をした後に捕虜となった舩坂氏は、やがて復員。生まれ故郷の村に帰って最初にやったことは、自分の名前が書かれた墓標を抜くことだったという。
捕虜としてアメリカ各地を転々としながらその目でアメリカの先進性を学び、彼我の差は知識にあると確信した。
そして日本の将来をより豊かにするために、書店経営に身を捧げることを決める。
手始めに、渋谷駅前の養父の書店の敷地内に、わずか一坪の店を開いた(養父は大盛堂貿易商会という会社の社長だった)。
舩坂はその余生をほかに、剣道指導(作家の三島由紀夫とは剣道を通じて親交があった)、そして戦友の遺骨収集・慰霊に捧げた。
書店経営は順調で、やがて日本で初めての試みとなる、建物すべてを使用した“本のデパート”「大盛堂書店」を作ったのだ。
プロフィール
ある編集者
大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。
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