2025/12/06
《藤田久美子の旅エッセー》鬼滅と味噌と。日本文化、仏での現在地~ フランスの日本リスペクトにモヤる~<後編>
前回のフランスでの“日本人気”の続き。
街を歩けば『ドラゴンボール』や『ONE PIECE(ワンピース)』のTシャツを着ている人を見かけ、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』を宣伝するラッピングバスも走るパリ。日本の漫画やアニメのファンがたくさんいることを実感する。
寿司もヨーロッパでも人気という認識はあった。それも理解できるが、寿司店に「SUKIYAKI」という名前を付けるのは許容できない。日本人が関わっていないことは容易に推測できる。

宿泊していたホテルの近くの寿司レストラン。掲示されているメニューのなかにすき焼きはなかった。
フランス料理に味噌や柚子といった日本の食材を取り入れるのも最近の流行りのようだ。
映画『グランメゾン・パリ』でキムタクもデザートに白味噌を使っていたし、味噌を使うとミシュランの星が取りやすくなるのはどうやら本当のようだ。
フランス滞在最終日、エッフェル塔も見えるパノラマビューのちょっとお高めのレストランを奮発した。
MISOと書いてあるものはあえて避けて、サイドメニューに注文したジンジャードレッシングのローストカリフラワー(€7≒2025年11月のレートで1,300円ほど)は、加熱し過ぎてふよふよになったカリフラワーがマヨネーズで和えてあり、紅生姜と刻み海苔がのっていた。
€18(約3,340円)のグリルアボカドは、お好みソース味だった。このレストランのシェフは日本の居酒屋で修行したのかしらん。ここもGoogle Mapを確認してみたが、フランス人にはたいへん好評のようである。

イタリア人がスパゲッティナポリタンに抱く感情は、これに似ているのかもしれない。なぜ、紅生姜…。
レストランのロケーション、豪華な内装、イケメンウェイターのうやうやしいサービスに比べて、あまりにもアンバランスでチープな味と感じるのは、日本人だからなのだろう。
一軒め酒場なら2千円で済むオーダーに一桁違うお支払いをした夜は、ロマンチックに更けていったのだった。
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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