2024/02/11
ある編集者のつぶやき #6 紫式部が故郷を思い、福井県で詠んだ和歌とは?
(#5からの続き)
司馬さんは「武生盆地の南東のはしに日野山という、標高七九五メートルながらよくめだつ山があり、そこに雪が降っているのを式部は見ていかにも憂鬱げな歌を詠んだりしている。」と書いている。
それがどんな歌か気になって今回調べてみたが、次のような歌だった。
こゝにかく日野の杉むら埋む雪 小塩(をしほ)の松に今日やまがへる
(現代語訳:ここ武生でこのように日野山の杉木立を埋めるように降っている雪だが、都の小塩山の松にも今日は雪が降り乱れているのでしょうか)
小塩山というのは、洛西大原野の地名でここに藤原氏の氏神を祀る大原野神社がある(『紫式部集』より)。かなりストレートに故郷を恋しく思う歌と言えるだろう。
大河ドラマ『光る君へ』では、式部と藤原道長(江本佑が演じている)の間の淡い恋心が描写されているが、式部が実際に結婚したのは藤原宜孝(佐々木蔵之介が演じている)である。宜孝は式部の父・為時の同年輩で式部の又従兄であり、親子ほど離れた年の差婚だったのだ。
宜孝はわざわざ武生に和歌を送ってきたりするほど式部に惚れていたようだが、対して式部は「どうせ近江に他に女がいるんでしょう?」などという意味のつれない返歌をしたりしている。
父より1年早く武生を去った式部は、京で宜孝と結婚するが、この結婚生活は死別で終わり3年ほどと短かった。
武生での生活が、式部の文豪としての人生にどのような影響を与えたのか、それが『光る君へ』でどのように描かれるのか、今から楽しみにしている。(この項終わり)
プロフィール
ある編集者
大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。
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