日本グルメ

2026/01/31

【食い意地編集者 脳内日記 ~こんなことばかり考えて食っていた】第4回 人生“一発逆転”の可能性あり! 立喰いそば店が教えてくれた夢と希望

現役時代は情報誌の飲食店トレンド情報や、青年コミック誌の国民的グルメ漫画などを担当。たいした美食家じゃないけど食い意地だけは、だれにも負けない?
そんな食い意地編集者が、どこにでもあるファミリーレストラン、ファストフードチェーン、コンビニフードから、スーパーの調味料棚、デリバリー弁当まで、だれもが毎日、気軽に食べている〝あれ〟を食べながら考えた、食うことに関するあれこれを、つれづれなるがまま綴ります。
ただの美味い店ガイドじゃない! これぞ持続可能なグルメ情報?

 

《第4回》山あり谷ありの立喰いそば店に起きた奇跡

 去年、我が事務所のすぐ近くに立喰いそば『梅市』がオープンした。

食い意地日記 和田守弘 神保町グルメ 梅市 立ち食いそば
野球少年の500円ラーメン『ら~麺GO』跡地にオープン。
 
 オープン初日。大人気店『うどん 丸香』の大行列には負けるけど、客足絶えなく店内は常に満席。あまりの大盛況で、かき揚げは午前中で終了したほど。

食い意地日記 和田守弘 神保町グルメ 梅市 立ち喰いそば
やむなく、紅しょうが天そばに生玉子入り。いなりを1つ注文。↑これで690円は安い。
 
 天ぷらはやや小ぶりで物足りない。そばは相当上質なものを使っているのか、かなり美味い。味自慢の『ゆで太郎』に負けずとも劣らない。
 
 そして何よりも、注文を受ける奥様と娘さんが美しい。
 脱サラした父親が「会社辞めてきた。立ち食いそば屋やるぞ!」と、妻と娘を巻き込んで一家総出で開店した店なんだろうか。すばらしきかな家族の絆。(←完全に妄想w)
 父親の夢を実現させるため、遊びたい盛りだろうに恋も遊びもあきらめ、黙々と手伝う娘さんの健気さに、勝手に心を打たれた。
 
 オープン2日目。笑顔だった“ソバ子”(娘さんの名前が分からず、心の中でそう名付けた)の表情がたちまち曇ってしまった。
 朝からあまりの大盛況で、なんとまだ12時20分だというのに蕎麦がなくなってしまったのだ。昼どきのど真ん中で蕎麦が売り切れという大失態。
 それを知らずに次々と押し寄せる客に「ごめんなさい。本当にごめんなさい、売り切れなんです!」
 大失態を演じてしまった父親に代わって頭を下げ続けるソバ子。どうやら、あまりの客の多さで厨房はパニックになっていたようだ。



 オープン3日目は、前日のトラブルで朝営業を取りやめ、11時からの開店。行ってみると、食券もない店の入口ではソバ子が客と現金の受け渡しをやっている。そもそも『ら~麺屋GO』の野球少年が券売機を持って行ってしまったのだろうか?

食い意地日記 神保町グルメ 梅市 立ち喰いそば 塚地
この日はかき揚げそばに生玉子、いなりを1つ加えて610円。
 
 オープンしてから9ヶ月が過ぎた今、驚くことに『梅市』は大繁盛店になっていた。
ドランク塚地のふらっと立ち食いそば』で紹介されたからだ。
 今では昼どきともなれば、お向かいの『丸香』にも負けないくらいの大行列ができている。
 
 先日、真夜中に『梅市』の前を通りがかったら、煌々と灯りが点いていた。店内を覗き込むと、ソバ子ママの姿が!
 そこへ店主が戻ってきたので訊いてみると、テレビ番組で紹介されてから連日大行列。
「毎日忙しくて仕方ない。この時間まで仕込みをしないと全然間に合わない」とのこと。
 
「もう、寝る時間がないんですよぉ~」と嬉しい悲鳴を上げていた。
 
 驚いた。塚地一発で、こんなに人気店になるとは!
 人生どこで大逆転があるのか!? 分からないものだ。

神保町 ドランク塚地 ふらっと立ち食いそば 梅市
季節は移り、店にも初夏の陽射しが降り注ぐ。毎日、昼も夜も店の前を通って見守り続けた。
 

執筆者プロフィール

和田守弘

雑誌編集者。
大手出版社でグルメ漫画、情報誌のグルメガイド、飲食トレンド分析記事などを担当した食い意地編集者。
独立後、制作会社を立ち上げ、飲食店紹介記事、コラムなどの執筆をしている。

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