2025/11/03
《藤田久美子の旅エッセー》深夜のヘルシンキで『会津磐梯山』を歌った話

フィンランドでポピュラーなアルコール飲料「ロング・ドリンク」と、フィンランドの湖池屋的ポテチメーカー、Taffelブランドのチップス。
フィンランドでは、アルコール度数の高い飲み物は酒類専門店でしか販売してはいけない法律があり、スーパーやコンビニ的なお店で売るお酒は8%までに規制されている。2024年に法改正される以前は5.6%だったそうだ。
スーパーのお酒はワインも低アルコールだし、大きく棚を占めているのはビールと、「ロング・ドリンク」というジンをフルーツ飲料で割った酎ハイのようなアルコールである。ロング・ドリンクは一般名で、いろいろなメーカーがロング・ドリンクを作っている。
酒類を販売できるのはどのお店も9時~21時だ。21時以降にお酒を飲みたくなったら、バーに行くしかない。
その晩、ヘルシンキの気温は10℃を下回り、ダウンジャケットと手袋が欲しいくらい寒い夜だった。バーを探して歩いていると、サンドレスの女性がテラス席を片付けていた。
「寒くないの?」と尋ねる。「私は一年中夏なの」との返答。
「飲んでいく?」というお誘いを断る理由はない。

毛皮を着て来店する人もいる寒さにもかかわらず、彼女は真夏のリゾートファッション。
彼女がワンオペで回しているそのバーは、4人が座ったら満席のカウンターのほかに4人掛けのテーブルがひとつ。
カウンターにはJaloviina(ヤロヴィーナ)というフィンランドのお酒に赤唐辛子を漬け込んだ、お店オリジナルのスピリッツが並んでいる。
私たちが入ったときにはテーブル席しか埋まってなかった店内は、いつの間にか立ち飲みの人たちでいっぱいになっていた。

ヤロヴィーナは、ブランデーに穀物スピリッツをブレンドしたアルコール度数40%ほどのカットブランデーと呼ばれるフィンランド独自のアルコール飲料。
顔馴染みの常連客は、勝手に冷蔵庫を開けて飲み物を取るシステムのようだ。私たちは問答無用に好みを尋ねられ、フレッシュフルーツを手絞りしたジュースのオリジナルカクテルを飲むことになった。美味しかった。

ウォッカベースの、ピンク・グレープフルーツ・ジュースのカクテル。
常連客が来るたびに「日本から来たゲスト」と紹介され、質問責めに遭ったのだが、その質問者のひとりが「私は日本の歌が歌える」と、歌ってくれたのは『赤とんぼ』だった。
ゆうやーけこやけぇのあかとーんーぼー♪
子どもの頃にコーラス隊に入っていて、ユネスコが主催する世界的な合唱コンクールで入賞したときに歌ったのだそうだ。世界各国の歌をその国の言語で歌うコーラス隊で、日本の歌はもうひとつ知っているという。
おっはらしょーすけさん、なんでぇしんしょーつぅぶした♪
よりによって、なぜその選曲?
歌詞の意味を教えると大いにウケた。私は福島県の出身ですから、『会津磐梯山』は何ならこぶし入りで歌える。酔いが回ったことも手伝って、いっしょにフルコーラス歌った自分にびっくりだ。
この女性は銀行のセキュリティ担当で、子どもは2人とも小学生だそうだ。小学生のお母さんが1人で深夜飲んでいることにもびっくりしたのは、世代の差かお国柄の違いか。
そういうフリーダムな雰囲気が、実に愉快なヘルシンキの夜でありました。
公式Instagram
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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