2025/05/09
《藤田久美子の旅エッセー》『1984』の島、ジュラ島にフェリーで渡る。<後編>
<前回からの続き>
ジュラ島でのウィスキーづくりは16世紀から続いていて、現在は19世紀初めに設立された1軒のウィスキー蒸溜所があり、島民の2割がこの蒸溜所で働いている。
蒸溜所の周辺の小さな集落に1軒のホテルと1軒のパブ、地元の人が利用する食料品店と教会がある。

アイル・オブ・ジュラ蒸溜所。ビジターセンターではギフト用のボトルの他、ロゴ入りのサイクリングウェアなどアパレルも扱っている。
島のほとんどは人の入らない手つかずの自然が残されており、集落から離れた島の北端の農場跡にジョージ・オーウェルが、かのディストピア小説の金字塔『1984』を執筆した別荘がある。
島の中に1本だけ通っている道路の行き止まりで車を降りて、6㎞ほど歩いた場所だそうだ。

ジュラ島のフェリー乗り場近くの風景。オーウェルが住んでいた70年以上前とほとんど何も変わっていないとのこと。
穏やかではありながらも年間を通して陰鬱な気候と、社会と隔絶された環境をオーウェルは気に入ったのだという。オーウェルは、この地で1949年に『1984』を書きあげた後、翌1950年に結核の悪化による吐血によりロンドンの病院で亡くなっている。
残念ながら気力と体力を持ち合わせておらず、その別荘までは行っていないのだが、オーウェル協会を通じて申し込めば宿泊も可能だそうだ。ただし、宿泊に必要なものはすべて、宿泊者が持参しなくてはならないとのことである。
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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