2024/09/24
《藤田久美子の旅エッセー》放牧地がすぐ近くに。丘の上のファーム・ディストラリー、キルホーマン
<前回からの続き>

アイラ島のウィスキー蒸留所のなかで、唯一海に面していないのがこのキルホーマン蒸留所である。駐車場の柵の向こうの牧草地では羊が草を食んでいる。
アイラ島を含めてスコットランドの車の制限速度はほとんどの道が時速60マイル(96キロ)で、日本だったら制限速度30キロくらいの細道でも、どの車も100キロ出して走る。
すれ違いが不可能な道幅の道路には、ところどころにすれ違いポイントが設けてある。
アイラ島は見通しがとてもよいので、対向車を視認したら、そこで待つシステムだ。車に出会うことはほぼ無いのだが、後ろからやってきた車がそのスピードだった場合、すれ違いポイントまで、頑張って100キロで走らねばならない。
そのアイラで、一度だけ渋滞に出くわしたことがある。
渋滞の原因は羊の群れだった。
牧舎から、牧草地への移動の最中だったのだろう。群れの最後には牧羊犬がいて、羊たちはとても行儀よく、列を乱さずゆっくりと歩いている。おそらく、それはアイラでは日常の風景で、何台もの車が羊の行進が終わるのを静かに待つのだった。

泊まったホテルの廊下に飾ってあった油絵。この絵のように、羊が群れをなして道を歩いていた。残念ながら、そのときの写真はタイミングが悪く撮れていない。羊とわかったときには、渋滞は解消され、車が動き出してしまったので
キルホーマンは、ファーム・ディスティラリー(農場蒸留所)に分類される蒸留所で、大麦の栽培からウィスキーになるまでのすべての工程を自社で行っている。
蒸留所周辺には大麦の畑が広がっていて、丘の上にあるのはそういう理由からなのだろう。

畑のなかの農道を走り、丘を登った場所に蒸留所が建っている
アイラのシングル・モルトのなかでは比較的飲みやすく、初心者向けと評価されているウィスキーだ。

どちらも日本国内では流通していないボトル
設立は2005年。まだ新しいビジターセンターには、ロゴ入りのグラスやアパレルなどグッズもたくさん並んでおり、広いカフェスペースもある。

カフェが併設されている蒸留所は珍しい。アイラでは、こことアードナホーの2か所
<つづく>
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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