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2024/07/20

ある編集者のつぶやき #29 アメリカの大手書店チェーン「BARNES & NOBLE / バーンズ・アンド・ノーブル」の復活劇から学んだこと―前編―

BARNES&NOBLE バーンズ・アンド・ノーブル B&N アメリカの書店 大手書店
公式HPより

 
昨年、バーンズ・アンド・ノーブル(以下、B&N)についての興味深い記事を見かけた。そこには「Amazon危機の後、B&Nは原点に立ち返っている」と書かれていた。
 
10年ほど前、たしかミシェル・ウエルベックの何かの小説作品を読んでいて、初めてB&Nの存在を知った。
 
B&Nはアメリカ最大のメガ書店チェーンであり、世界に先駆けてスターバックスと提携した。コーヒープレイスの併設やおもちゃ販売などの多角化戦略を行う高級店舗も展開していた。いわば日本の紀伊国屋書店とTSUTAYAを、足して2で割って(店舗数的に)10をかけたような会社である。



しかし2008年ごろから、リアル書店のご多分に漏れず、Amazonの攻勢によってB&Nはシェアを削られ続けた。そしてついに、2019年には投資ファンドに身売りをした。
 
それがここに来て業績が回復し、店舗も純増に転換したというのだ。
書店の未来は絶望的だと思い込んでいた私は、たいへん驚いた。
 
その要因の1つは、オーナーである投資会社が、英国の書店チェーンのCEOだったジェームズ・ドーント氏を招聘したことによるものだった。
ドーント氏は決して目新しいことをやったのではない。ただ個々の店舗の書店員に自主性を与え、地域にとって「本当に良い書店を運営する」ことに集中したのだ。
 
おかげで、B&Nの店舗からは画一的な棚が一掃され、本好きが通いたくなる魅力的な書店へと生まれ変わったそうだ。
<後編に続く>

プロフィール

ある編集者

大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。

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