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2026/09/04

ある編集者のつぶやき #46 『応仁の乱』『福音派』――中公新書は、ヒットを狙っていない

中央公論新社HP 中公新書
ある編集者 編集者のつぶやき 中公新書 ベストセラー

 
応仁の乱』が売れた。『言語の本質』が売れた。そして今度は『福音派』『継体天皇』である。
 
これだけ続くと、中公新書編集部には「売れるテーマ」を見抜く秘訣があるのではと勘繰りたくなる。
ところが調べてみると、話はどうも逆らしい。



かつて編集長を務めた白戸直人さんによれば、中公新書が重視しているのは「大きなテーマ」だという。編集部内では「教科書のゴチック体」のようなテーマ、と呼ばれることもあるそうだ。
 
つまり狙っているのは「いま何が売れるか」ではない。『応仁の乱』『福音派』『継体天皇』のように、名前だけは誰もが知っていながら、実のところ中身をよく知らない――そういう対象を敢えて選んでいる。
 
しかも企画から刊行までは平均3年以上かかる。3年前の時点で「3年後は継体天皇が来る」などと予測できるはずがない。
 
それでも、作る。
今年のニュースに乗るためではなく、そのテーマを誰かが本気で知りたくなったとき、手に取るための1冊を作っているのだ。



事実、中公新書では年によって、年間売上の半分ほどを発売から1年以上たった既刊が占めるのだという。
ここまで来ると、「ヒット」の見え方そのものが変わってくる。
 
中公新書は、ベストセラーを次々と狙い撃ちしているわけではない。
何年たっても読む理由が失われない本を、ただひたすら棚に増やし続けているだけだ。
そしてある日、世の中の側からその1冊を必要とする瞬間が訪れる。
 
ヒットを追いかけないからこそ、ときどきヒットのほうが追いついてくる。
中公新書の強さの秘密は、そんなところにあるのかもしれない。

 

プロフィール

ある編集者

大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。

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