海外エンタメ

2024/07/10

【ジェリー・ヤンの世界撮りっぷ】人気ドラマ『エミリー、パリへ行く』にも登場するサントロペの今

コート・ダジュールのもう一つの有名なスポットは、サントロペだ。
 
元々小さな漁村であったサントロペは、1956年の映画『素直な悪女』(仏: Et Dieu… créa la femme 『そして神は…女を創造された』の意味)で一躍有名になった。
この映画では当時22歳だったブリジット・バルドーが主演。一夜にしてセンセーションを巻き起こし、「Sex Kitten(セクシーな子猫ちゃん)」というニックネームを得た。
 
その後、セレブたちが港のカフェ・セネキエでカフェラテを楽しむ姿がパパラッチによって撮影され、小さな村の神秘的な雰囲気をさらに高めた。
 
世界中の富豪や有名人がこの町にヴィラや豪邸を購入し、夏を過ごすようになった。サントロペの名前はフランス文化愛好者や虚栄心の追随者たちの想像力を掻き立てた。
 
しかし、今日のサントロペは昔の映画やタブロイド紙に描かれたものとはかなり異なる。
 
ジェリー・ヤン 世界撮りっぷ サントロペ ラマチュエル エミリー、パリへ行く 素直な悪女
©Jerry Yang
 
現在、この町はハイシーズン中は観光客で溢れかえっている。
ほとんどのフランスの富豪はもはやここにヴィラや豪邸を所有しておらず、代わりに近くのラマチュエルを選んでいる。
ラマチュエルは30分(渋滞がない場合)離れた郊外で、より静かで砂浜のビーチもある。
今日、この町の豪華なヴィラや豪邸のほとんどは、アメリカ人やロシア人の富豪によって所有されている。



僕はサントロペに4回行ったことがある。
その4回のいずれも自分の意思ではなく、いつも日本からの友人などサントロペに憧れを抱く人々に付き添っていた。
僕にとって、今日のサントロペは常に交通渋滞が発生し、高すぎるレストランがあり、通りには騒がしい観光客がいるサーカスのような場所にすぎない。
 
それでも、サントロペは依然として注目の的だ。
有名なNetflixシリーズ『エミリー、パリへ行く』では、エミリーの裕福な既婚の求婚者が彼女のためにサントロペへの旅行を手配していた。
 
しかし、そのエピソードはおそらくアメリカ人の脚本家が書いたものだろう。
エミリーがその男から「一等車の列車を予約した」とのメッセージを受け取るシーンがあるが、サントロペ行きの列車は存在しないのだ。
最寄りのTGV駅はサン=ラファエルで、そこからサントロペまではさらに車で1時間かかる。もちろん、交通渋滞がない場合だ。
 
また、富裕層は決して電車では南仏に行かない。
TGVはマルセイユを過ぎると山岳地帯に入り、劇的に速度が落ちる。耐えられないほどだ。
お金に余裕がある方々は、トゥーロン=イエールやニースなどの近くの空港に飛び、そこからヘリコプターで直接ラマチュエルのビーチに向かう。
さっきも言ったね、今ではフランスの富豪はサントロペではなくラマチュエルに泊まっていると。
 
いずれにせよ、サントロペに対する世界中の憧れは続くと思う。
 
そして、まだ行ったことのない友人に付き添ってこの町を訪れることも排除しない、僕は。
ただし、それが実現するには、かなり親しい友人である必要がある。
 
ジェリー・ヤン 世界撮りっぷ サントロペ ラマチュエル エミリー、パリへ行く 素直な悪女
©Jerry Yang

プロフィール

Jerry Yang(ジェリー・ヤン)

フランス・パリを拠点とするベンチャーキャピタル投資会社「HCVC」のゼネラル・パートナー。
台湾の高雄で生まれ育ち、起業家として台湾からシリコンバレーへ。渡仏した後、ベンチャー投資を行う。
趣味で世界各地を旅行し、撮影した写真が「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたこともある。

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