観劇

2025/11/05

【今日も感劇日和】心に深く語りかける作品~『マリー・キュリー』~

RYU 今日も感劇日和 観劇 マリー・キュリー
公式HP
 
韓国創作伝記ミュージカルの日本演出版。
今回が再演となる(初演は2023年)。
 
コロナで渡航できない時期に韓国で上演され、とても評判が良かったので、初演時は楽しみに劇場へと向かった。
期待通りストーリーが深く、舞台の構成が巧みで、キャストの力量も高い。気がつけば追いチケをしていた(笑)。
 
あの有名な「キュリー夫人」の人生が、ノンフィクションにフィクションを織り交ぜて描かれていく。
子供の頃に伝記で読んだ知識なんて豆粒ほどだった。
男社会の中で女性というハンデをもろともせず研究に没頭し、夫ピエールと二人三脚で走り続け、大きな苦悩も抱え・・・。
 
そんな女性の一生を、演劇ではなくミュージカルとして、ここまでクオリティーの高い作品に作り上げた韓国の制作陣、日本版の演出を手掛けた鈴木裕美さん、翻訳・訳詞の鈴木亜子さんに拍手喝采した!
だから再演の一報を聞いたときはとても嬉しかった。
 

 
あれから2年が過ぎた今回の舞台では、人権を保障されない労働者の待遇や利益追求に走る社会のあり方を色濃く映し出したストーリーに、より目が向いた。
 



 
ラジウムを発見し、未来のために誰でも使えるようにしたことが大きな悲劇を生むという皮肉、ラジウムに夢を託し、瞳を輝かせながら働くも、健康を損ね亡くなる工場労働者たち。
新たな1歩を踏み出すのは、本当に容易ではない。
 
打ちのめされながらも歯を食いしばり前を向くマリー、彼女を支える夫ピエールや親友アンヌ、母の思いを受け継いでいく娘の姿に、今回も涙した。
進歩や発明には、先駆者たちの血のにじむような努力と大きな犠牲が伴い、次世代へ継承することでようやく完成形に近づくことを痛感。
マリー・キューリーの苦悩に満ちた人生は、時を経て私たちの人生を灯すことにつながったのだ。

RYU 今日も感劇日和 観劇 マリー・キュリー

再演版は、主要キャストが全てWキャストになった。
今回は、確かな歌唱力を持つ昆夏美さんのマリー、夫ピエールはミュージカル界で私が今1番注目している松下優也さんの回を選択。
 
一途さが溢れ出ていた昆マリー。
研究に打ち込み輝いていた日々、伴侶との充実の時間、困難と向き合いながらもがく時期・・・と、女性の一生を演じ分ける演技がとても良かった。
そして、やはり歌声が魅力的! 難曲たちを見事に歌い上げていた(拍手)。
 
松下ピエールは、愛情の塊だった。
男女の垣根を超えて、研究者としてマリーを尊重するピエールの人間性が、手に取るように伝わった。
ラストのデュエットで、涙をにじませながら笑顔を作る表情にジーン。
キンキーのローラでも感じたけど、本当に繊細な演技をする俳優だと思う。
 
初演のキャストが多く残っている実力派アンサンブル陣は、今回も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた!
劇中、工場の労働者として一人ひとりが名前を持ち、存在感を示すシーンも多いが、実力のある方々が演じるからこそ真実味が増すのだと感じた。
 
この10年でいくつもの韓国創作ミュージカルが日本で上演されるようになったが、『マリー・キュリー』はその中でも1、2を争う質の高い作品だと思っている。
 
東京では「銀河劇場」で11月9日(日)までの上演。
その後、大阪へ。

公式HP

執筆者プロフィール

RYU

なんの肩書きもない観劇オタク。
2010年のクリスマスに韓国・ソウルで出会ったチョ・スンウによる『ジキル&ハイド』に衝撃を受けて以来、韓国ミュージカルの沼にハマる。
2011年以降、日本と韓国での劇場通いが始まり、ブログ(現在休眠中)やインスタに観劇記録をUPしている。
好きな俳優はチョ・スンウ、ホン・グァンホ、マイケル・K・リー、ヤン・ジュンモ、パク・ウンテ、中川晃教、成河など、数えきれない。

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