2024/10/28
《藤田久美子の旅エッセー》軽い酒質でビギナー向き。ブナハーブンはカティーサークに原酒を供給している蒸溜所
アイラの蒸溜所のなかでもとくに辺鄙な立地。日本ではアサヒビールが販売権を持っている
<前回からの続き>
ブナハーブンは、ゲール語で河口を意味する。この蒸溜所の仕込み水となっているマーガデイル川の河口に位置することから名付けられた。
1年のうち、アイラ島がいちばん賑わうのは毎年5月末から6月初旬にかけて開催されるアイラ・フェスティバルの1週間である。
音楽、ダンス、伝統料理など、アイラ島の文化の復興を目的として、1985年に地元の有志が始めた手作りのお祭りに各蒸溜所が参加するようになり、この時期にしか販売されないフェスティバルために用意された特別なボトルを求めて、世界中からウィスキーファンが集まるようになった。それぞれの蒸溜所独自のイベントも開催される。
アイラ・フェスティバル仕様のブナハーブンミニボトルセット
翌年のフェスティバルのスケジュールが発表されるとすぐに、島内のホテルはすべて満室になり、キャンプサイトすら予約が難しいという。ちなみに2025年の開催は5月23日から。
キルホーマンを除く9つの蒸溜所はいずれも海岸に立地している。それは海運での輸送の便が大きな理由として挙げられる。
陸路が整備されていなかった時代、ウィスキーを運び出す役割は船が担っていた。アイラ・フェスティバルの時期には、各蒸留所を海から巡るウィスキークルーズも実施される。こちらの予約も至難の業だ。
私がアイラ島を訪れたのは9月だが、宿泊したホテルのバーテンダーが「フェスティバルの時期は人が多過ぎておすすめしない。今の時期に来て正解。限定ボトルも売れ残りが買えるよ」と教えてくれた。
とは言え、売れ残っていたのはこのブナハーブンだけだった。アイラのシングル・モルトのなかでは個性が希薄なこのウィスキーは、どうやらあまり人気がないらしい。
私は味も蒸溜所からの風景も、アイラの蒸溜所のなかでいちばん好きなのがここ、ブナハーブンだ。
海に面したテラスから、ジュラ島のパプス・オブ・ジュラの山並みを臨むことができる
カティサークの原酒として、軽い酒質を求められていた時期が長いブナハーブンだが、蒸溜所オフィシャルのシングルモルトのボトルを出荷するようになった現在は、スモーキーなウィスキーも作っている。
日本で流通しているボトルは、レートの関係もあって、往々にして現地で買うほうが高い
アイラ島のなかでも、とりわけ時間の流れがゆったりしていると感じる場所である。
<つづく>
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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