2024/02/25
ある編集者のつぶやき #8 結局、一番好きなジブリ作品は『海がきこえる』だ
「一番好きなジブリ作品は何か?」という質問に、『海がきこえる』だと答えると、たいてい微妙な反応が返ってくる。
まずジブリ作品の中では圧倒的に知名度が低い。
この作品は、1993年のこどもの日に、日本テレビ開局40周年記念番組として夕方4時から放送されたスペシャルアニメで、72分とごく短い。一応、その後何館かの映画館で上映もされたらしいが、ジブリファンでも観たことがある人は少数派かもしれない。
実家の教育方針で、私は高校を卒業するまで夜8時以降はテレビを観せてもらえなかった(土曜日のみ21時までの視聴が許されていた)。
したがって金曜ロードショーなどで、メジャーなジブリ作品が放映されたとしても、まったく観ることができなかった。お笑いコンビ・かまいたちの漫才ネタのように、『となりのトトロ』や『天空の城ラピュタ』を観ていない“特権”というものを、ある年齢まで本当に保持していたのだ。
高校時点で、『風の谷のナウシカ』は全7巻を友達が貸してくれたのを夢中で読んだ記憶がある。
『耳をすませば』はグループ交際で映画館に誘われたが、部活バカだった私はそちらを優先して行かなかった。
しかし、いつどういう経緯でだったかまったく覚えていないのだが、なぜか『海がきこえる』だけはビデオで観ていた。だから多分、私が初めてきちんと観たジブリアニメは『海がきこえる』だったはずだ。
とても地味な作品だが、リアル高校生だった私の胸には素直に沁みた。『スケバン刑事Ⅱ』を小学生の頃に欠かさず観ていたため、土佐弁には馴染みというか郷愁のようなものを持っており、主人公の杜崎拓のセリフが耳に心地よかった。
またヒロインの武藤里伽子の強烈にわがままなくせに繊細で脆い性格が、当時好きだった子にちょっと似ていた(気がした)というのも、強く記憶に残った理由だったかもしれない。
(#9に続く)
プロフィール
ある編集者
大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。
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