日本エンタメ

2024/08/16

ある編集者のつぶやき #33 ヒットしたのになぜか誰もストーリーを覚えていない不思議なアニメ『宇宙船サジタリウス』

1986~87年にかけて、熱狂とまでは言わないが子どもたちの間で静かなブームになったアニメがある。『宇宙船サジタリウス』という作品だ。
 
テレ朝系列の全国放送で、『ドラえもん』が放送された後の19時半から始まる、30分番組だった。
 
ストーリーは零細宇宙運輸会社「宇宙便利舎」のパイロット、トッピーとラナが、駆け出しの考古学者ジラフからの依頼を受けて始まる。その依頼とは、学会が認めない自説を証明するために、未開の惑星に調査に出かけたアン教授(女性)を連れ戻すことで、彼らはおんぼろ宇宙船「サジタリウス号」で旅立つ。
アン教授を探す冒険譚が中心となっているが、さまざまな星に立ち寄る中で異星人と出会いながら話は進んで行く。
 
このアニメには大きく3つの特徴がある。
 
1つは見ての通り、登場人物がみんな獣人であること。
2つ目は影山ヒロノブの歌う主題歌「スターダストボーイズ」(作詞はあの阿久悠である!)の歌詞に「どこから見てもスーパーマンじゃない スペースオペラの主役になれない」とあるように、しがない中年サラリーマンたちが主人公であること。
 
そして3つ目は、当時の子どもはほぼ誰も正確なストーリーを覚えていないのに、なぜかこの主題歌とコメディタッチで情けないのに本質的にカッコ良いアニメだったことだけは、みんなよく覚えていることだ。



主人公がヒーローではないのになぜ子どもたちの間でヒットしたのか(当時の最高視聴率は19%だった)は、未だに自分の中で言語化できない。
ストーリーは子ども向けとしてはかなり難解で、あとで調べたところによると、当時の米ソ冷戦構造や環境問題、絶滅危惧種の話なども取り入れたものだったらしい。
 
先日、U-NEXTアマプラでこの『宇宙船サジタリウス』が全話観られると知って第1話だけ観てみたが、やはりほとんど何も覚えていなかった。
 
ただ、主人公と同じおっさんサラリーマンとして、今こそ観返してみたいアニメではある。
本当はどんなストーリーが展開されていたのか今なら理解できるはずだという期待もあり、残り76話を観るのがとても楽しみだ。
 
余談だが、カエルに似たキャラのラナの大好物はラザニア。当時の日本でラザニアなんてものが食卓に上がる家庭は極めて稀だったはずなので、このアニメでラザニアを初めて知った子どもたちは多かったことだろう。

プロフィール

ある編集者

大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。

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