日本エンタメ

2024/01/06

【遊感倶楽部】映画「石岡タロー」 とにかく泣ける!17年間駅で待ち続けた保護犬の実話 待たれる公開拡大

映画 石岡タロー 石坂アツシ クラウドファンディング
©2023 ONE POINT SIX
 
 「石岡タロー」という保護犬の実話をベースにした映画が、地元茨城県を出発点に細々と全国のどこかでロングラン上映されている。細々と…というのは製作者にいささか失礼か。大きな配給会社に頼らず、クラウドファンディングにより公開に漕ぎつけた。作品の内容や趣旨に賛同した映画館主の心意気とファンの支えで、完成披露から1年2カ月を経た今も上映の志が紡がれているのだ。
 
 主人公のタローは1964年、石岡市立東小学校に迷い込み保護された犬である。児童の登校を見守り、人気者になる一方、約2キロ離れた石岡駅に17年間、通い続けた。雨の日も雪の日も、駅ではぐれた飼い主の女の子と再会するため、朝夕、待合室で改札口を見続けていたという。その様子を忠実に再現したシーンの数々は、こうして書いているだけで、泣けてくる。予算との闘いとなるインディーズ作品だが、手抜きは一切ない。昭和の街並みの再現や、茨城のカーマニアに協力を得た25台の旧車による昭和の国道には、筑波山を仰ぐノスタルジックな里山の風景が溶け込む。



 体の成長に合わせてて、チャッピー、チャビ、ダイという3頭のビーグルのミックス犬が見事に演じ分けている。うち2頭は実際に保護犬で、仔犬のチャッピーは撮影直前に里親が決まり、もう1頭のチャビはドッグトレーナーの元で里親募集のまま撮影に参加、10カ月にわたる撮影の最終日に里親が決まったそうだ。だから徐々に人懐っこくなっていくのは、〝迫真〟の演技なのである。
 
 けなげなタローは、商店街や地域の人々にも親しまれ、語り継がれて後に石岡駅前に忠犬タローのブロンズ像が立つ。渋谷の忠犬ハチ公のように石岡の街を見守っている。
 約6年前、愛犬家からタローのひたむなストーリーを伝え聞いた石坂アツシ監督が初の長編として映画化を決断。地元ロケが何度か延期されるなどコロナ禍で奮闘した。タローとはぐれてしまう飼い主役に、NHK大河ドラマ「どうする家康」などで活躍する同県土浦市出身の寺田藍月(あづき)が起用され、幼い少女と仔犬の堅い絆が描かれる。タローが迷い込んだ小学校の校長に山口良一、ほか渡辺美奈代、菊池均也、グレート義太夫ら。
 
 昨年10月から地元・茨城県内各地のシネコンや千葉、静岡などの映画館で公開。とくにシネプレックスつくばでは1月11日まで異例のロングラン上映となった。あまや座(茨城県那珂市、1月12日まで)、玉津東天紅(大分県豊後高田市、シネマサンライズ(茨城県日立市、1月19日~2月1日)、ホールソレイユ(香川県高松市、2月2~15日)など。東京、大阪など都心での公開が待たれる。
 
公式HP

執筆者プロフィール

中本裕己

1963年、東京生まれ。関西大学社会学部卒。夕刊紙編集長を経て、記者に出戻り中。ゴシップから真面目なインタビューまで、芸能取材を中心に夕刊紙記者歴36年。難しいことはわからない。引き出しもない。深みはない。でも面白いことへのアンテナは敏感。著書に『56歳で父に、45歳で母になりました-生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記-』。日本レコード大賞審査委員。浅草芸能大賞専門審査委員。

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