2025/09/15
ある編集者のつぶやき #42 人が“食べられる”恐怖──三毛別羆事件、Netflixドラマ化に震える理由
そのニュースを目にした瞬間、背筋がぞくりと震えた。
Netflixが、あの「三毛別羆事件」をドラマ化するというのだ。
記事によれば、『地面師たち』の大根仁監督がメガホンを取り、主演は山田孝之。人気グループBE:FIRSTのRYOKIこと三山凌輝も出演するという。
慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件(文春文庫)
1915年12月、北海道苫前郡の寒村に突如現れた一頭の巨大な羆(ヒグマ)。
人を襲い、家を破り、わずか数日のうちに7人を殺害、3人に重傷を負わせた。村は崩壊寸前となり、恐怖と混乱が広がった。
羆は12月14日、討伐隊によってようやく射殺されるまで、執拗に村を襲い続けた。
この事件に心がざわつくのは、単なる“昔話”ではなく、「自分だったら」と想像してしまうからだろう。
人が喰われる――そんな死に方は、現代の日本ではほとんど思い浮かばない。
しかし想像した瞬間、強烈に脳をかき乱す。牙で肉を裂かれ、血が吹き出し、逃げ場もなく、ただ自分の体が“食物”になる恐怖。
三毛別の羆は、ただの野生動物ではなかった。
罠を見抜き、人間の行動を学習し、襲撃を繰り返した。伝承によれば、人間の女の匂いを追って闇に紛れ戻ってきたとも語られる。
そこには理屈を超えた“怪物性”があった。
だからこそ、今回の映像化に望むのは、単なるグロテスクな再現ではない。
人間の無力さ、自然の圧倒的な暴力、そしてそれでも生き延びようとした人々の小さな勇気――。
百年以上前の事件でありながら、私たちの心が震えるのは、おそらくまだ「喰われる側の記憶」が、人間の奥底に残っているからだ。
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プロフィール
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ある編集者
大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。
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