2024/02/18
ある編集者のつぶやき #7 犬の専門雑誌、猫の専門雑誌
出版業界には1つの格言というか、法則がある。それは、「猫は売れるが、犬は売れない」というものだ。
たとえば小説のアンソロジーを編むとして、猫は売れるが、犬は売れない。絶対とは言えないが、売れたら奇跡だと思う。企画会議でも「まあ犬は売れないからね」とはよく聞く言葉だ。
それがなぜなのか、私には長年不思議だった。
昨年末、わけあって人生で初めて犬(フレンチブルドッグ)を家にお迎えすることになった。
私は長らく猫好きだったが飼ったことはなく、わずか1カ月で宗旨替えして犬信者になった。犬信者になってから書店の雑誌コーナーのペットの棚を眺めてみて、「犬が売れない理由」が初めて少しわかった気がする。
裏側から見るとナマズにしか見えないうちのフレブル
猫の専門雑誌には、はっきりと「猫」や「ねこ」というタイトルがついたものが多い。猫好きは猫全般を愛している。
一方、犬の専門雑誌のタイトルは、例えば次のようなものだ。
「RETRIEVER(レトリーバー)」「Shi-Ba(シーバ) 」「BUHI(ブヒ)」「コーギースタイル」「チワワスタイル」「プードルスタイル」etc.
そう、犬種ごとに細分化されたものが多いのだ。どうも犬の飼い主の興味は犬全般にはなく、自分が飼っている犬種のみに向けられるようだ。
そうなる理由はよくわからない。私自身も、自分ないし知り合いが飼っている犬以外に街で会っても、なぜかほとんど興味がわかない。猫好きだった時は、道端の野良猫をも愛する博愛主義者だったのに……。
この年末年始に江藤淳の『犬と私』を読もうと思っていたのだが、読み始めてすぐに興味を失い、放り出してしまった。なぜなら、江藤が飼っていたのは「コッカースパニエル」で、フレンチブルドッグではなかったからだ。(この項終わり)
BUHI 2024年冬号 Vol.69
プロフィール
ある編集者
大学卒業後、大手出版社に勤務。
子供の頃から漫画が大好きだったが、いざ大人になると小説の編集にかかわり、多くの作品を世に送り出すことに。
ここでは思ったことを率直につぶやいてみたい。
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