2024/02/04
【ジェリー・ヤンの世界撮りっぷ】僕がパリで愛してやまない“ルコさん”
去年の11月、パリの右岸に引っ越した。
パリに来てから11年以上、僕はサンジェルマン・デ・プレ(左岸)に住んでいた。11年以上ずっと同じ小さいアパートに住んでいたんだ。
家賃は最初の1,400ユーロ(当時のレートでは約14万円)から、ちょっとずつ上がっていった。毎年、INSEE(フランス国立統計経済研究所)が公表する統計によると、退去するときには1,563ユーロ(退去時のレートで約25万円)になっていた。
いい人だけどケチな大家さんは、すぐに次のテナントを見つけた。
管理人に引っ越しの日程を伝えに行くと、ポルトガル出身で井戸端会議が大好きな彼は「大家が家賃を1,800ユーロに上げたみたいよ」と、小さな声で僕に教えてくれた。
サンジェルマン・デ・プレ(左岸)に住んでいた11年間、フランス人の友だちはよく「パリ人は誰も左岸に住んでないよ」と言って僕をいじっていた。
正確にいえば、6区や7区に住んでるパリ人の多くは老人だった。サンジェルマン・デ・プレ地区でできた若い友だちは、イタリア人と日本人がメイン。特に金持ちのイタリア人が多い。
パリ人の友だちのsoirée (ホームパーティー)に呼ばれるのは、大体右岸。終電が終わったあと、酔っ払って45分掛かってセーヌ川越え、歩いて家に戻った経験が何度もある。
ちょうどコロナ前の夏、やっと引っ越そうと思って、内見を始めた。友だちのほとんどが右岸住まいなのに、僕が最初に探したのはやっぱり6区のサンジェルマン・デ・プレのままだった。主な理由は、リュクサンブール公園だった。これは嘘じゃない。
©Jerry Yang
愛称“Luko(ルコ)さん” のリュクサンブール公園が僕にとって「世界一番綺麗な公園」だ。11年間のパリの写真散策は、9割が家からたった3分のルコさんから始まった。
秋、冬、春、そして夏。僕のパソコンの中で四季それぞれのルコさんを記録してきた。
特に仕事で旅行が多い僕は、パリに戻って最初の休日は絶対にライカを持ってルコさんに会いに行った。ルコさんと会ったら、やっと「ただいま」という感じかも。
でも、引っ越した。
アパート探しに4年も掛け、東京でいえば恵比寿っぽい飲み屋街の9区の住民になった。
友だちは僕が本当に彼らのいる右岸に来たとは信じられなかったようだ。
「こいつ、本当にサンジェルマン・デ・プレをやめたの?」って。
うん、ルコさんから離れたの。でも、これからも遠距離で愛させてください。
プロフィール
Jerry Yang(ジェリー・ヤン)
フランス・パリを拠点とするベンチャーキャピタル投資会社「HCVC」のゼネラル・パートナー。
台湾の高雄で生まれ育ち、起業家として台湾からシリコンバレーへ。渡仏した後、ベンチャー投資を行う。
趣味で世界各地を旅行し、撮影した写真が「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたこともある。
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