2024/10/19
【ジェリー・ヤンの世界撮りっぷ】実は立地が不便な「フィルハーモニー・ド・パリ」
©Jerry Yang
パリの北東部には、一般的に“ラ・ヴィレット”と呼ばれる巨大なキャンパスがある。
サン・マルタン運河の上流にまたがり、シテ科学産業博物館や大規模な展示会場であるグランド・ハル・ド・ラ・ヴィレットが入っている。
ラ・ヴィレットは、僕がかつて住んでいた左岸からは比較的遠い。
パリに住み始めた最初の数年は、そこに行くことはあまりなく、友だちにそのエリアで会おうと誘われたときだけ行っていた。
でも2015年以降は、住んでいたサン=ジェルマン=デ=プレの家から少なくとも40分の距離にもかかわらず、年に1、2回は必ずラ・ヴィレットに行くようになっていた。その理由はフィルハーモニー・ド・パリだ。
フィルハーモニー・ド・パリは、フランスのトップオーケストラ「パリ管弦楽団(オーケストル・ド・パリ)」の本拠地。
1967年に有名な指揮者シャルル・ミュンシュによって設立され、歴代の音楽監督にはヘルベルト・フォン・カラヤンやゲオルグ・ショルティ、ダニエル・バレンボイム、クリストフ・フォン・ドホナーニ、クリストフ・エッシェンバッハなどの名指揮者がいた。
長い間、パリ管弦楽団の本拠地は8区にあるホール「サル・プレイエル」だった。
このコンサートホールは、建築も音響もあまり印象的ではなかったけど、市の中心にあり、とても便利だったのであまり文句は言えない。
でも2015年にジャン・ヌーベル設計の新しい美しいコンサートホールがラ・ヴィレットにオープンし、パリ管弦楽団の新しい本拠地になった。それ以来、オーケストラを聴きたいなら、皆ラ・ヴィレットまで行かなければならなくなったんだ。
その結果、主要な音楽家たちも他のコンサートホールではなく、この新しいホールで演奏するようになった。
パリの16区に住む裕福な銀行家たちにとっては、むしろ歓迎すべき変化といえる。
新しいホールは「ペリフェリック」という高速道路の近くにあるため、BMWやメルセデスでガレージ付きの200m²のアパートに戻るのがずっと楽になったからだ。
でも、他のファンにとっては、コンサート後に満員のメトロに乗る羽目になる。皮肉なことに、近くにはメトロの駅と路線が一つしかないからだ。
プロフィール
Jerry Yang(ジェリー・ヤン)
フランス・パリを拠点とするベンチャーキャピタル投資会社「HCVC」のゼネラル・パートナー。
台湾の高雄で生まれ育ち、起業家として台湾からシリコンバレーへ。渡仏した後、ベンチャー投資を行う。
趣味で世界各地を旅行し、撮影した写真が「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたこともある。
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