2025/04/15
《藤田久美子の旅エッセー》サントリーがオーナー。【ボウモア】と【ラフロイグ】
前回はドラマ「地面師」にも登場したポートエレンに触れたが、アイラ島のシングルモルトのなかで、現在、日本国内において比較的入手しやすいボトルはボウモアとラフロイグだろう。
たとえばイトーヨーカドーやライフといった庶民的なスーパーの洋酒売り場にも、この2種はサントリーの角やブラックニッカの傍に並んでいることが多い。どちらもサントリーが販売しているシングルモルト・ウィスキーだ。
18世紀からの蒸溜の歴史を持つボウモアは、世界的にウィスキーが不人気だった時代に経営が悪化し、1989年にサントリーの資本投下を受けることで窮地を脱した。1994年には、サントリーが完全子会社化している。

ボウモア蒸溜所ビジターセンターで販売されているギフト用ミニボトル
19世紀初めに蒸溜を始めたラフロイグは、製法は維持しながらも経営母体の紆余曲折を経て、2011年にジムビーム(バーボン・ウィスキー)の米国ビーム社傘下になった。
2014年にサントリーホールディングスがビーム社を買収したことにより、現在のラフロイグ蒸溜所の所有者はサントリーである。

ラフロイグの中で一番売れ筋のラフロイグ10年
穏やか、華やか、フルーティ、洗練された、気品がある、といった形容詞で、その味わいが語られるボウモアは、エリザベス2世女王が訪問したアイラ島唯一の蒸溜所としても知られている。「アイラモルトの女王」と呼ばれるシングルモルト・ウィスキーだ。
蒸溜所ツアーでは、伝統的で手間がかかるため現在ではほとんど行われなくなったフロア・モルティングという麦芽の発芽の様子も見学することができる。蒸溜所の中庭に隣接した場所には、かつてウィスキー職人の住居だったコテージが宿泊施設として整えられており、ボウモアだけを目当てにアイラ島を訪問するファンがいることも頷ける。

蒸溜所がメンテナンスの時期に入る夏には、ウィスキー職人たちが総出で白壁を塗りなおすそうだ。
ラフロイグは、アメリカの禁酒法時代に薬という名目で輸入が許されていたという伝説を持つほどに正露丸臭いシングルモルトである。
チャールズ国王は、皇太子時代からこのウィスキーがお気に入りで、1994年に王室御用達許可証が下賜されている。
蒸溜所には、駐車場からメインの建物に行く途中の庭にウサギがいるし、海に面してテーブルが用意され、ラフロイグの歴史を紹介したミュージアム、ギフト・ショップ、ラウンジ・バーが併設されている。

ゲール語で「入り江の美しい窪地」という意味のラフロイグ。風光明媚な立地である。
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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