2024/04/24
ネコろんで読む英語コラム (4)不機嫌なジョニー・デップ
今や海外旅行なんて当たり前の時代になったけれど、私が子供の頃はクイズ番組で優勝でもしない限り庶民には縁のない話だった。
高校生の時、アメリカにホームステイしたいと思っていたのに遠慮して親に言えず、そうこうしているうちに大学生になり「こうなったらバイト代貯めて自力で行こう!」と、がむしゃらにアルバイトをするようになった。
念願かなってホームステイをしたのは大学3年生の時で、ニューヨーク郊外に一カ月ほど滞在した。
SNSはおろかインターネットすらなくまだ黒電話の時代。
国際電話は料金が高いため気軽に日本にいる親や友達にかけるわけにもいかず、おかげで英語の世界にどっぷり浸かれたのはかえってよかったかもしれない。
便利になりすぎた今の方が逆に語学の習得には不利なような気もする。
当時の私はそこそこ英語ができるつもりでいたから意気揚々とアメリカに渡ったのだけれど、数日も経たないうちに鼻をへし折られる羽目になった。とにかくネイティブの会話が理解できないのだ。
難しい話をしているわけではない。挨拶程度の言葉を二言、三言かわしているだけなのに何を言っているのかがわからない。「ザッ!」「ザッ!」と、不思議な擬音語を発する若い男性たち。いったい何なんだろうと思っていたら「What’s up?」だった。
「What’s up?」なんて聞いたこともないし学校で習ったこともない。挨拶って「Hi」とか「Hello」じゃないの?
ある時はジョニー・デップそっくりな配達員のお兄さんに「Thank you」と言ったら「バッ!」と返され、怒らせてしまったのかと勘違い。お礼を述べただけなのになぜ「バッ!」と威嚇されなくてはならないのか。こんな理不尽なことってある?
ジョニー似の気だるげなお兄さんはただ虫の居所が悪かっただけなんだろうか・・・と落ち込んでいたら「You bet!」と言っていたのだった。
「Thank you」の返しは「You are welcome」じゃないの?「You bet(いいってことよ)」なんて知らないよ!しかもYou聞こえてこないし。
とまあ、ホームステイ3日目にして私の英語に対する自信はボロボロに打ち砕かれてしまった。
学校で習う英語はあくまでも読み書きがベース。ネイティブなら幼稚園児でも知っているような挨拶のフレーズさえ知らないという厳しい現実に、話し言葉と書き言葉は全く別のものなのだと痛いほど思い知らされたのだった。
執筆者プロフィール
Yumi
English Boot Camp代表。英語発音コーチ、著者。東京在住の大阪人。
2010年に開設した英語学習者向けのYouTubeはチャンネル登録者数が19万人を超える。
小学生の時にゴダイゴのタケカワユキヒデのファンになり英語に興味を持つ。
思春期は洋楽(ロック)とアメリカ文化に傾倒し、いつしか英語を教えるように。
著書に『ネコろんで学べる英語発音の本』がある。タイトルからもわかるように大の愛猫家。
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