2024/06/09
《藤田久美子の旅エッセー》アムステルダムで安心・安全なナイトクラビング体験
2024年9月末までの期間限定で、松屋銀座の道を挟んだ向かい側にオープンしたアサヒ・スーパードライのコンセプトショップは、没入型エクスペリエンスを謳い、ビール製造工程の映像体験付きビア・バーである。
ONE OK ROCKとのコラボグッズがワンオクファンに人気で、初日に完売したそうだ。
風が吹いたり水しぶきがやってきたり、4DX的な5分間の映像+ポップコーン&ビール1杯で700円は高くはない。追加料金を支払えば、各種おつまみの注文やビールのお代わりができる。
しかしながら、あの映像はとくに見なくてもよかったし、ポップコーンは湿気ってたし、案内のおにいさんおねえさんのユニフォームにお金掛ける必要はなかったし、そもそもあんなにたくさんの接客係はいなくても大丈夫そうな狭いスペースだし、銀座のど真ん中である必然性も疑問だし、アサヒはどこの代理店に騙されたのだろう。
企画書には、イメージとしてアムステルダムの中心地にあるハイネケン・エクスペリエンスの紹介があったはず、と思うのだった。

ハイネケン・エクスペリエンスは、アムステルダム国立美術館から500mほどの好立地。
オランダ・アムステルダムは、売春と大麻が合法だ。つまり、エリアによってはいささかデンジャラスである。
そんな街で、安全に少し羽目を外した気分になれるのが、ハイネケンの醸造所跡の体験型ミュージアムのバーなのだ。

ハイネケン・エクスペリエンスのバー。各国からの観光客が、知らない人同士乾杯し合う国際交流空間。
入場料は€27.5。2024年5月末時点のレートで約4700円に約2時間のミュージアムツアーとビール3杯が含まれる。
少々お高い。なので、その入場料を払ってまで、悪い人たちは入ってこない場所である。
なぜ私がそこへ行ったのかというと、アイ・アムステルダム・シティ・カードで追加料金なしに入場できたからだ。
ヨーロッパの都市には、公共交通機関と観光施設が定額内もしくは割引料金で利用できるシティ・カードを発行しているところがたくさんある。カードという名称はかつての名残と推測され、現在はスマートフォンのアプリを利用する。
アムステルダムの場合、24時間€60、48時間€85、72時間€100、96時間€115、120時間€125の5種類で、バス、トラム、地下鉄は乗り放題、レンブラントの『夜警』やフェルメールの『牛乳を注ぐ女』を収蔵しているアムステルダム国立美術館や運河クルーズも定額に含まれる。

ポットスチルのそばでは、実際に麦芽が発酵している様子を見せてくれるデモンストレーションも。
ハイネケン・エクスペリエンスは、ハイネケンの最初の工場をミュージアムにしている場所で、1988年まで実際に使用していたポットスチルがそのまま残っている。
ビールの醸造過程の説明、ハイネケンの歴史と歴代のボトルやラベルの展示、ビール工場内を体感する映像などで構成されており、映像体験のあとには、ビールが1杯提供される。ここの映像も特筆すべきものではない。残念。

手際よくビールを注いでいく様子を見るのも楽しい。
ツアーの最後、最上階にバーがある。
バーで飲めるのは2杯まで。なので、酔っ払いもここにはいない。安心・安全な理由は、そこにもあるのだった。
藤田久美子
ライター・エディター・トランスレーター。トレンド誌、ビジネス誌の執筆、編集のほか、IT系を中心に翻訳者として活動。著書に「大事なことはみんなリクルートから教わった」(共著・ソフトバンク文庫)、「松本隆のことばの力」(集英社インターナショナル新書)など。
執筆者プロフィール
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