2024/07/17
【ジェリー・ヤンの世界撮りっぷ】ヨーロッパらしさとは程遠いモンテカルロでの想い出
コート・ダジュールのもう一つの過大評価された観光地はモンテカルロだ。
サントロペと同様、この世界的に有名な高級アパートとヨットで溢れる海辺の町を何度か訪れたが、そのほとんどは海外からの友人に同行したものだった。自分の意思で行ったのは一度きりだ。
©Jerry Yang
ヨーロッパに馴染みのない観光客にとって、モンテカルロの街並みは十分にヨーロッパ的で、非常に清潔で安全に保たれており、美しい海の景色も楽しめ、ゴミやスリなど、他のヨーロッパの都市にありがちなマイナス面なしに「ヨーロッパ」を体験できる場所だと理解できる。
人生で数回しかヨーロッパを訪れない人にとっては、モンテカルロを嫌う理由はほとんどないだろう。
しかし、モンテカルロはヨーロッパらしさとは程遠い場所だ。
住民のほとんどは、税金対策のためにここの高級アパートを購入した裕福な外国人だ。(フランス市民は両国政府間の協定により、ここで税務上の居住権を得ることが禁止されている)
彼らの大半はここに住んでいない。彼らの高級アパートは美術品やデザイナー家具の保管場所として、そして年に一度のF1観戦のためだけに使用されている。
彼らが雇う家政婦は毎週やってくるが、ほとんどやることはない。アパートが日常的に使用されていないからだ。
©Jerry Yang
モンテカルロは主に消費税から税収を得ている。
2020年の新型コロナウイルスの流行は大きな打撃となった。フランスや他の近隣ヨーロッパ諸国が厳しいロックダウンを実施し、モンテカルロもそれに従わざるを得なかったからだ。
観光客がいなければ、この都市国家の税収はほぼゼロになる。王室にとっては文字通り財政危機だった。
そのため、2020年10月フランスの2回目のロックダウンで全てのレストランやカフェが閉鎖された際、モンテカルロは毎日19時まで営業させることを決定した。
レストランやカフェでの社交生活を奪われたフランス人たちは、高価なカフェクレームやスパゲッティ・アイ・フルッティ・ディ・マーレ(魚介類のスパゲッティー)を楽しむためにモンテカルロに殺到した。
すべての店は満席で、外には長い行列ができていた。
私もその一人だった。
12月半ばには耐えられなくなり、ニースへの航空券を購入し、着いたらすぐタクシーでモンテカルロに向かった。
そこで2ヶ月ぶりレストランでの食事をした。思わず涙が出そうになった。
その後、友人の父親の高級アパートで1泊し、美術品やデザイナー家具に囲まれて過ごし、翌朝は朝一番の便でパリに戻った。
これが私の唯一の個人的なモンテカルロ旅行だった。
また新たなパンデミックでもない限り、自分の意思でここを訪れることは想像できない。
©Jerry Yang
プロフィール
Jerry Yang(ジェリー・ヤン)
フランス・パリを拠点とするベンチャーキャピタル投資会社「HCVC」のゼネラル・パートナー。
台湾の高雄で生まれ育ち、起業家として台湾からシリコンバレーへ。渡仏した後、ベンチャー投資を行う。
趣味で世界各地を旅行し、撮影した写真が「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたこともある。
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