韓国エンタメ

2025/03/08

【毎日がエンタメ】コラム #9 映画『ケナは韓国が嫌いで』で考えずにはいられなかったこと

ケナは韓国が嫌いで コ・アソン 韓国映画

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公開日:2025年3月7日(金)

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ケナは韓国が嫌いで

ベストセラーとなった小説「韓国が嫌いで」が原作。韓国の若者が直面する現実をリアルに映し出す。
 
28歳のケナ(コ・アソン)は大学を卒業後、金融会社に就職。毎日片道2時間かけてソウル市内の会社に通勤している。
恋人にも苛立ち、家族といても居心地が悪い。
地獄のような通勤に興味のない仕事、恋人との不透明な未来、やたら古い価値観を押しつけてくる家族との生活。
「自分には落ち度がないのに、ここでは幸せになれない」。
息の詰まる日々の中、ケナは韓国を抜け出すことを決意する。

 
*****
今から14年前のこと。ウォンビン主演の映画『アジョシ』の日本公開時、ウォンビンと一緒に来日した故キム・セロンさんを取材したことがある。当時、彼女はまだ11歳の子役だった。
 
アジョシ キム・セロン ウォンビン
『アジョシ』ウォンビン、キム・セロン、イ・ジョンボム監督来日記者会見
 
可愛いというよりは、随分と大人びてしっかりしている。
そう感じたが、記者会見ではウォンビンがたびたび彼女を気遣う姿が印象的だった。
 
そのキム・セロンさんが遺体で発見されたのは先月16日のこと。自ら命を絶ったと報道された。享年24歳だった。
 
子役から大人の女優へと成長したキム・セロンさんだが、2022年5月に起こした飲酒運転事故で彼女の芸能人生は暗転する。
多額の借金を背負った上、芸能活動も自粛。生活苦からアルバイトもしていたと報じられた。活動を再開させる機会もたびたびあったが、報道されるたび批判にもさらされた。
 
まだ20代前半で「人生これから」というときに、何をしようにも批判される。一体、どんな思いを抱えて日々を過ごしていたのか。想像することさえできない。
 
キム・セロンさんの報道を目にするたび、一度失敗したら再起のチャンスさえもらえないのだろうか?
そんなふうにも感じた。
 
日本で公開された韓国映画『ケナは韓国が嫌いで』は、生きづらい韓国社会から外の世界に飛び出したケナの姿が描かれている。
そのケナを演じているのは、“天才子役”と呼ばれていたコ・アソンだ。14歳の中学生時代にポン・ジュノ監督の『グエムル-漢江の怪物-』に出演。あれから19年が過ぎ、現在は32歳になっている。
同じ天才子役として女優人生を歩んでいたコ・アソンは、キム・セロンさんの死についてどう感じたのだろうか。ふと、そんなことを思った。
 
ケナは韓国が嫌いで海外に飛び出し、自分の居場所を見つけようとする。
天国へと旅立ったキム・セロンさんはようやく自由になれたのだろうか。
 
アジョシ キム・セロン ウォンビン
『アジョシ』ウォンビン、キム・セロン、イ・ジョンボム監督来日記者会見

 

『ケナは韓国が嫌いで』<予告編
監督:チャン・ゴンジェ
脚本:チャン・ゴンジェ
出演:コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム
原題:한국이 싫어서
2024年/韓国/107分/G
© 2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.
配給:アモニプロデュース
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執筆者プロフィール

児玉愛子(らぶこ)

           

韓国コラムニスト。韓流エンタメ誌、単行本、ガイドブック等の企画から取材、執筆を行う。
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係やエンタメコラムを寄稿する韓国ウオッチャー。

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