2024/02/17
【ジェリー・ヤンの世界撮りっぷ】時間の概念を忘れさせてしまうほどの特別な空間
古い都市には大体、“川”がある。川があるこそ都市になりゆく。
でも現代都市の造りにおいて、市民と従来の川の関係性が曖昧だ。
川が乱暴に地下に埋められたこともあるし、高い壁で分断されたこともある。最近は地球温暖化のせいで、夏に氾濫を起こす様子も頻繁に見られる。ただの大きな排水管のように思われることすらあるのだ。
キャリアのおかげでたくさんの都市を旅行してきた僕にとって、セーヌ川はまさに“曖昧性ゼロ”の存在だ。
僕がどれぐらいパリを愛しているのかは、「どれぐらいセーヌ川を愛しているのか」に比例する。
2012年6月にパリに引っ越してから僕が一番好きな散歩ルートは、ノートルダムからセーヌ川沿いで、ビル・アケム橋まで行き、そこから6番線メトロに乗って6区の家に帰るというものだった。
約5キロのこの散歩ルートは、沿線にアンリ4世が佇んでる「ポンヌフ」、恋人たちの聖地「ポンデザール」、ジョギング族の大好物「ソルフェリーノ橋」、金の女神が頂点に立っている「アレクサンドル3世橋」、ダイアナ元妃の事故現場近くの「アルマ橋」、エッフェル塔とトロカデロ庭園を繋ぐ「イエナ橋」を含めて計14本の橋がある。
5キロぐらいの散歩なら、一人でいるときはライカの撮影をしながら、露店カフェで軽く白ワインを飲む。
友だちとなら楽しく互いにボケて突っ込んで、川岸に座って穏やかな流れを見る。恋人となら、手を繋いで無言で歩き、橋の影で長く甘い口づけを交わす。
一年四季、一日早晩、一時間、一分、一秒、一瞬、一刹那。
まるで時間の概念を忘れたかのように、この川に恋してる。
プロフィール
Jerry Yang(ジェリー・ヤン)
フランス・パリを拠点とするベンチャーキャピタル投資会社「HCVC」のゼネラル・パートナー。
台湾の高雄で生まれ育ち、起業家として台湾からシリコンバレーへ。渡仏した後、ベンチャー投資を行う。
趣味で世界各地を旅行し、撮影した写真が「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたこともある。
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